晋が斉を凌駕していく理由を、前回までに述べた。 交易品の豊富さと黄河中流に適した水軍の存在が、覇権の交代を促す要因となったのである。 そしてこれ以降、「前盟主」の斉が、晋への嫉妬のため、その外交が迷走することも以前に説明した。 今回は、第三の「領土国家」(=覇者)、楚の解説に移りたい。 春秋時代に花開いた古代中国都市国家文明が、「中原」を越えて拡張することが出来たとすれば、それは南しかなかった。 以北: 山間部には中原型の都市国家は成立しない。そこには晋という「領土国家」しか誕生できない制約がある。それ以外の地域には、南北を貫いて黄河に注ぐ河川がなく、都市国家成立の余地はない。 「都市国家は山を登れない」 「都市国家は水の無いところで成立し得ない」 以東: 海に近づくほど、耕作に適した土地が少なくなる。ここに成立したのも、塩を主たる交易品とする斉。 「都市国家は海に近づけない」 「都市国家は大河下流の湿地帯では成長できない」 以西: 周都(後の洛陽)以西は山が迫っている。 「都市文明は川を上れない」 「都市文明は大河中流域に入って初めて花開く」 では、「中原」以南はどうか。 具体的には淮水以南であるが、これらの条件を満たしているのである。 淮水以南は 「南北に流れて大河(この場合は長江)に注ぐ支流がある」 「大河(長江)が山から出た中流域にあたる」 勿論、水も豊富。 事実、「随」や「息」と言った、都市国家も成立しているのである。 しかし、結局は淮水以南には都市国家文明は拡大せず、「領土国家」が成立した。 ここに「文明の衝突」を観ることができる。 (続く)
by 1-shikou
| 2007-12-26 19:58
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